放射線治療
放射線治療とは
がん治療は,手術による外科療法,抗がん剤による化学療法,放射線治療の3本柱で行われています.手術では傷跡が残り,身体の形や機能を失ってしまう場合でも,放射線治療では切らずに,機能を残したままがんを治すことができます.そのため,様々ながんの治療に使われています.
放射線治療は,細胞のDNAにダメージを与えてがんを小さくするので,治療中患者さんは痛くも熱くもありません.
よく心配されることですが,放射線治療を受けた患者さんと接しても,家族やまわりの人が放射線被ばくすることはありません.ただ予定された一定期間行わないと効果がありませんので,途中でやめないようにして下さい。
放射線治療はこのような場合に有効です。
- 手術のように体を切ることなく,臓器や機能を温存したまま“がん”の治療をします。
- 高齢者や全身状態のよくない患者さんにも受けて頂けます。
- 手術前に照射して,“がん”を小さくしてから取る場合。
- 手術で取り切れなかった“がん”の治療や再発予防に。
- 痛みや呼吸困難などの症状の改善に。
放射線治療の進め方
- 診察
- 専門の担当医が種々の検査とあわせて病気にとって最も良い方法を決めます。
- 治療計画(シミュレーション)
- 毎回正確に治療できるようにマジック等で印をつけたり,シェル等の固定具を作成したりしています。又、CTを使用して,どのようにしたら治療効果がより上がるかを検討し,照射部位を決めます.どのように照射するか決まりましたら,間違いがないか実際の機器(リニアック)を使用して「位置決め」を行います。
- 毎回の治療
- 治療台に上がっていただき,すでにつけた印に従って治療します.数分で終わります。
- 印は絶対に消さないでください!
薄くなっても自分で書き足したりしないで早めに連絡を! - 治療台は狭いので上り下りに注意してください。
- 治療室内は治療中一人になりますが,テレビで見ていますのでご安心ください。
何か具合の悪いことがあれば,合図か声で知らせてください。 - 治療自体は痛くもかゆくもありません。時々機械から音がしますが、治療中は可能な限り動かないでください。
- 印は絶対に消さないでください!
- 治療台に上がっていただき,すでにつけた印に従って治療します.数分で終わります。
- 経過観察(診察)
- 治療期間中,定期的に診察し、治療効果の判断や副作用がないか現在の体調等をチェックします。何か心配事があれば気兼ねなくお話ください。
照射法の種類
根治的照射
早期の頭頚部癌・食道癌・肺癌・乳癌・前立腺癌などに対して腫瘍の根絶を目指して行います.癌の種類により治療スケジュールは異なりますが治療期間は5-6週間です.
対症的治療
がんの骨転移や脳転移などに対して照射をおこない,痛みや脳症状の緩和・改善を目指します.癌の種類や部位,患者さまの状態により治療スケジュールは異なります.
予防照射
術後の再発予防や脳転移の予防のためにおこないます.
定位放射線治療
腫瘍(特に肺・胸部)に対する根治的な放射線治療で、外来での照射が可能です.
IMRT(強度変調放射線治療)*
前立腺癌に対する根治的な放射線治療で、非侵襲的に外来での照射が可能です。
和歌山県下で最初に強度変調放射線治療を実施しており、150例以上の症例を治療しています。
*IMRT
放射線治療では照射する線量を増やせばそれだけ治療効果は高くなりますが、同時に周辺の正常臓器にも過大な線量を与えることがあり、これにより副作用を招く可能性があります。IMRTは放射線が腫瘍に対して大きな効果を与える長所はそのままに、正常臓器への副作用を出来るだけ小さくするため考案された治療方法です.IMRTでは,照射精度を飛躍的に向上させるため,従来に比し照射方向を増やすとともに,照射ビームを更に細かく分割し,それぞれの照射形状とその時間までも高精度に制御することにより,臓器の形に合わせた精密でより理想的な照射ができるようになりました.これにより、放射線治療効果のさらなる向上と従来には求めることが難しかった副作用の軽減が期待できます.当面は前立腺がんに対する治療を中心に行う予定ですが,特に放射線による副作用が問題となりやすい直腸における被ばく軽減が期待されています.この治療では綿密な治療計画の立案後,複雑な検証作業を経て、治療の有効性と妥当性を考査しており,放射線治療専門医の診察により適応を確認した後,実際の治療開始までには約2週間程度の準備期間をいただいています.
前立腺を含む赤の実線の中が特に高線量になっていて,直腸部分はやや低線量になっています(左図).ぎざぎざの枠を何種類も組み合わせて最適な照射範囲を作ります(右図).
放射線治療装置
放射線治療スタッフ
① 放射線治療医(放射線腫瘍医)
個々の患者さんに最適な照射の方法と投与量を決定いたします.
放射線腫瘍医は高度の教育を受けた医療チームを率いています.
② 看護師(がん放射線治療看護認定看護師)
看護,および治療と副作用への対処のお手伝いをいたします.
③ 診療放射線技師(放射線治療専門技師、放射線治療品質管理士)
医師によって決定された治療方針にしたがって,
患部だけに正確に放射線の照射を行ったり,
機器の管理を行っています.
* 医学物理士
放射線治療の品質管理を目的として,医学物理部門を担当します.